【鍋田さん】私も場合、劣等感も強い向学心の動機になっていると思います。父親から受け継いだ会社ですから、やっぱり創業者ではなく親の七光りで今の自分があるということもそうです。尊敬している父に追いつけ、追い越せと言うのは夢ですよね。少しでも近づき、抜かす時があったら・・・って常に思っていますね。
そうやって、自分なりに、やることをやっているけれど、「ああ、2代目なんだね」と言われると、やはり悔しい気持ちにもなりますし、意地もありますよ。強い原動力という点で言えば、これこそがそうじゃないかと思っています。
――経常利益500%になるために、他にどんなことをされましたか?
【鍋田さん】会社を動かして行くためのマップや構図を脳内で作り上げました。自分の商売や経営というものに対しての基礎構図ができあがり、それを脳にスキャンして入れているイメージです。
日常のいかなる判断をする時も、
そのマップを引き出して判断・決断をすることができるんです。
――鍋田流のアパレル業界の虎の巻ができたということでしょうか?
【鍋田さん】私がフォトリーディングを通じて集めた経営者の成功体験や、自分が事業を進める中で培ってきた感覚を合わせたものです。
構図というのは、マインドマップに似たものなのですが、それが、財務版、OEM(ブランド特注の製造企画)に対しての仕組み版、営業版、在庫管理版がそれぞれにあって、且つ、そのそれぞれは一つの私の目指すところの事業像のセントラルイメージから派生してくるような構図になっているんです。
――従業員や取引先から質問をされたり問題に直面した時には、必要な部分のマップを拡大して、詳細なマップの中から判断するヒントを見つけ出せるような、そういった感じで役立っているということですか?
【鍋田さん】そうそう、まさしくそういった感じです! 全体像は確実にあるのは判るけれど、それらはどこから説明したら良いか解らないですし、言葉にするのは難しいんです。これは本をどんどんフォトリーディングしていくと、マインドマップの枝がどんどん広がって、マップはさらに大きくなって行くんです。
――マインドマップのセントラルイメージは
「会社の利益アップ」という目的としたものですか?
【鍋田さん】あとは、従業員の幸せですよね。「うちの会社で働いてよかった!」と言ってもらえるような会社、「あの会社に務めているの?すごいわね!」と言われるような会社にしたいんです。結果、従業員の人生の幸せにもなるだろうし、ステイクホルダーの幸せにもなる。それが、最終的な目的ですよね。
しかし、そこに到達するにはまだまだですよね、
“言うが易し、行うが難し”と言ったところですかね。
――お話しているイメージの中で、
従業員の皆さんにとってとても付き合いやすい社長だと思いますよ。
【鍋田さん】うーん・・・付き合いやすすぎるくらいかと思います(笑)
ただ、上からものを言いつけてばかりでは、従業員は「イエスマン」になってしまいますし、やっぱり彼らの判断や経験等を尊重したいですし、彼らの考えを尊重する意味でも、失敗してもいい余裕もあげたいと考えています。
――すごい、達観してらっしゃる。どこでこういったことを学ばれたのですか?
【鍋田さん】本です、本!本を読んで自分なりの
経営者としての在り方を学んだんですよね。
フォトリーディング集中講座の最初の目的は「本を速く読む」ことだったのですが、習っているうちにスキルを超えた部分が楽しくなってきてしまったんですよね。フォトリーディングは脳を使った一つの速読スキル。それに収まらずに、その手法の根底となる脳をいかに使って知識をためて、その知識をどう活用してゆくか? ということですよね。
自分なりに知識や見聞を広めていくことに、本当に役立てています。
そう思うと講座は本当に安い投資でしたね!
――経営者としての在り方を学ばれて、素晴らしいお考えをお持ちなのにも驚きましたが、リーマンショック以来、やはり商売されている方はどの業種でもなんらかの影響は受けている中で、これだけの売上げを伸ばし成果を出されていることにも驚きです。
【鍋田さん】特に弊社は店舗での小売り部門はどんどん伸びています。卸部門の売上げが落ちる部分を見越して、それを補うために力を注いできたのです。
――小売り部門に力を注ごうという、判断こそが先見の明を持たれていることを物語っていますよね。先見の明と、準備に備えるための事業の資金力、体力、などが揃わないと、その判断はできないと思うのです。
リーマンショックのタイミングで、厳しい向かい風がくるのを解っていながらにして、それを追い風とばかりに風にうまくのって事業を拡大させられたのですから。その先見の明はどこで養われたのですか?
【鍋田さん】リーマンショックに対して前から警戒している経営者もいたのです。この日本の情勢を見越していた人です。その彼が言ったことを知らなければその先のジャッジができないということ、つまり情報収集力です。あとは、そういった意見を聞いて事業主としてそれをどう捉えるのか?という判断力でしょうね。
自分が現場で汗かいて成功したり失敗したりしてきた感覚と、多くの経営者やいろんな方の意見・知恵を頂いて、始めて判断材料ができるのですから、いろんな意見に耳を傾けなければいけないですよね。
――同じ経営者として鍋田さんのお話は勉強になることがたくさんあります。フォトリーディング集中講座に来られたときは、いかにも現場で働く社長! といったイメージだったのですが、それに変化が訪れたのは何がきっかけなのでしょうか?
【鍋田さん】確かに、受講前の私はそういったことを考えられる経営者じゃなかったですよね。毎日ジャージで現場作業に入っているような社長でしたから。しかし、私が現場から離れてみると、従業員がそこで楽しそうに働いているんですよね。
だから、現場を離れた後は現場で体を動かさない分、自分の知恵・知識を増やして次の判断やアイデアに必要な勉強をする時間がとるようにしたのです。情勢や流行を把握したり、経営者として必要な情報収集をしたり、勉強をしたりできるようになって、あとはどうやったらこの会社が生き残っていけるか?
そのために、タイミングをみたり、人と出会ったり、
チャンスを活かしたりして、適切な判断をするだけです。
今、考えているのを少しお伝えすると、インドにジャイプールという大きな街があるのですが、そこで商品のクオリティーを中国レベルまであげられるように、先駆けてインドの工場へ投資をし、成熟させようと思っています。
トレンドを取り込んだアパレルの事業をやっていくと、製造時間と輸送時間が長いとリスクになってしまいます。だから日本のアパレル製造は中国へ集まってしまうのです。そして、ユニクロさんなどの大手が資本を中国に投下すればするほど中国工場の質は上がり、工場は成熟して行きます。
しかし、私たちの取り扱っている洋服や雑貨は、トレンドを含まないエスニック+ベーシックなアパレル産業ですから、ある程度の輸送機間と製造時間が許される訳です。そういう視点でみると、綿花に関して広大な面積を所有し、大資本が流れていないインドには商売のチャンスも多いんですよね。
インド工場に関しては、まだまだ問題は山積みですが、私たちとしては大資本が流れている中国工場くらいのクオリティーにインド工場を育てていきたいのです。
また、販売も日本だけではなく、韓国にも営業所をつくる予定です。他にもインドネシアとかアジアの諸国に対して、グローバルな商売をしていくことを考えています。
1〜2年前の私は海外に工場を作ることは考えてなかったですし、グローバルな販売網なんて考えてもいなかったですから。現場の倉庫で汗ダラダラかいて仕事していた社長の私が、今やインドのジャイプールが・・・という考えをしているのですから、不思議でしょ?
――思考する内容が本当に変わってしまったんですね!
【鍋田さん】そのきっかけはフォトリーディング集中講座ですよ。私が父から会社を継いでから、少し会社が傾き始めたんです。でも、迷惑はかけられない。リストラや減給は経営者として申し訳が立たない。それでどうにかしなきゃいけない。このままじゃいけない、けれど時間もない! と思ってフォトリーディング集中講座に出たわけですから。
――まさにピンチはチャンス! ですね。
2009年8月の1ヶ月で8店舗のオープンをし、さらに工場に資本投下するのは、並大抵の資金力ではできないように思えるのですが・・・
【鍋田さん】そうそう1店舗オープンさせるのに、必要な資金は実は30〜50万くらいだったりするんです。
――え!? 30万ですか? そんな話聞いたことありません!
店舗オープン費用は5百万、1000万は当たり前と思っていたのですが、それがたったの30万って、一体どういう方法を使っているのですか?
【鍋田さん】経費削減はすべての面において経常利益を出すために必要な発想です。リーマンショック以降、原状回復するお金もなく撤退していくショップが増えたのです。いわゆる“居抜き”の状態で商品と在庫だけ持って、棚や壁、床などはオシャレに改装されたテナントを残して撤退していくのです。
私たちの扱っている商品はエスニックなので、商品こそがショップのカラーに強く影響します。ある程度オシャレなテナントであれば商品を置いて、ロゴの入ったポスターを飾れば、それだけでエスニック色の強い、オシャレな店舗をデパートのフロアに堂々とオープンさせることが出来きるんです。そして、テナント提供側は空のエリアを作りたくないので、値段も安価になりますよね。
「ピンチに追われるのではなくって、ピンチを追って行けば不況は怖くない」と柳井氏の本に書いてあったんです。そう思うと楽しいもので、どんな時にでも脳はストレスを感じることなく、元気でいられるんでしょうね。だからこそ、健康で健全な判断ができ、不況の風に煽られて身をひく企業の残していった物を邪魔にするのではなく、我々の事業に活かしていく発想が可能になるんだと思います。
――最後にその「脳」が元気な鍋田さんの今後の目標をお伺いしても宜しいでしょうか?
【鍋田さん】いやいや、私の脳が元気でいられるのもたくさん知識、知恵があってこそですし、何よりも周囲との人間関係に恵まれているということじゃないでしょうか。私の夢に賛同してくれる従業員が集まってくれたと思っているんですよ。自分が成長して行けば、その成長した自分にふさわしい人たちと出逢えるものだと思いましたね。
今後の目標としては、小売部門については、国内100店舗を目指したいですね。あとは、海外へのネットワークを強めてグローバルな販売網を築いて行きたいと思っています。まずは韓国の海外一号店ですね! |